自転車活用推進研究会


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「ポストコロナの道路の取り組み」提案書


この提案書について

国土交通省道路局が募集した「ポストコロナの道路の取り組み」に、9名の会員から提案をいただきました。ありがとうございました。自活研としてまとめましたが、皆さんの提案のすべてを盛り込むことはできませんでした。素晴らしい提案なのにカットせざるを得なかった理由の多くが、道路局の範疇にないもので、いくつかは、たとえば交通管理者(警察)への要請や協議を求める項目として取り上げましたが、魚屋でステーキ肉を注文することになってしまうものは諦めざるを得ませんでした。これが、政府や内閣、推進本部や自転車議連に対するものであれば、総合的網羅的に提案できるのですが、縦割り行政の限界を痛感させられます。

多分、建設コンサルタントや土木建設関係企業は、自社のノウハウや製品を活かした提案を行うでしょうし、良いものは実際の仕事に結びつくかもしれません。自活研の場合は純粋にアイディア提供なので、どこか少しでも実現に近づけば大成功ということになります。

提出前に会員で回覧し、シェイプアップする余裕がなく、私の一存で提出してしまったことは深くお詫び申し上げます。一応、締め切りの数分前に滑り込んだはずなので、時間切れで捨てられるということはないものと思います。

皆さまのご協力に深く感謝申し上げます。

NPO自転車活用推進研究会
小林 成基

① ポストコロナの道路の取り組み(名称):

歩行者と多様な緩速交通の安全快適な通行空間の確保について

② ポストコロナの新しい生活様式や社会経済の変革に対応するために
求められる道路の役割や機能:
新型コロナウイルス感染防止のため三密を避けることが推奨されるため、テレワークでは補完できない所用のための移動は、大量輸送を前提とする公共交通機関を避け、パーソナルな移動手段へ転向しつつあり、終息の見通しが立たない現在、コロナ後ではなく「With CORONA」を想定しなければならない。一方、高齢化による交通事故発生傾向の変容、健康への配慮、化石燃料多用による気候変動を含む環境影響を考慮すると、過度な自動車利用を抑制し、自転車をはじめとした省エネルギー、省スペースの移動手段への転換は必然である。自転車活用推進法の施行は、今日の状況を予測・先取りしており、法に基づく推進計画を促進する上でも、道路の役割や機能を、(1)歩いて暮らせる街づくりにふさわしい道路、(2)自転車など健康的な緩速交通が安全快適に利用できる道路、の二点を目標として整理し直すべきと考える。
③ ②を実現するための具体的な取り組み
(1) 歩道設置率(現行約14%)の向上
  • 制限速度の見直しを交通管理者と協議し、車線幅の縮小、右折車線・左折専用車線などの廃止により、歩道幅員を確保
  • 街の活性化に繋がる換気の良い屋外のテラスレストランなどを展開できる公園機能を有した高幅員の歩道の整備、既存の広幅員歩道の多目的利用の促進
(2) 歩道通行可のルール見直しを交通管理者に要請
  • シニアカーや車椅子、歩行器、ベビーカーをはじめこれから登場する多様な超低速モビリティ(時速6km未満)の通行が想定される歩行者用道路に、車両である自転車、しかも電動アシスト自転車までを通行させる機能を求めるのは無理があるので、早急に本来の歩道としての利用に復帰させるため道交法の見直しを要請
(3) 制限速度抑制と都市部への大胆な自動車流入規制を前提とした通行区分再配分
  • 歩行者と自転車、自動車が交錯する都心部においてはゾーン30を原則とし、ハンプ、シケインなどを設置し物理的に速度抑制する
  • 特に、通学路/スクールゾーンにおいては、居住者車両と許可車両のみ通行可とするライジングボラード、あるいは通過車両を排除する道路延長途中のクルマ止め(進入口に通過不可標識)などの設置
  • 路線バスの定時制を担保する緩速車線(路上駐車や渋滞車両の排除により時速30km未満の運航で時刻表通りとなることが判っている)を整備し、バスを優先し、欧州で普通に行われている自転車とバスの共存空間を確保
(4) 歩道上の時代的役割を終えた夾雑物の排除
  • クルマのドライバーに安心してアクセルを踏ませる効果がある横断防止柵、管理が行き届かないと成長しすぎて死角を多く作ってしまう植栽帯等の撤去、いっこうに進展が見えてこない無電柱化を促進し、マークがあることで自転車の歩道走行を助長する横断歩道に併設した横断帯などの新設を止め、既設物の撤去により、歩道が歩く人のためのスペースであることを具現化(現状は、クルマの邪魔になるものを詰め込むスペースと化している)
(5) 自転車走行空間の整備促進
  • 予想される自転車利用者増加に対応し、複数車線を有する道路における自転車通行空間の拡大を図り、近い将来投入が予想される多様なモビリティの通行空間としても利用可能な緩速車線を実験的に整備。成果を踏まえて、緩速車線を法的に復活させ、整備計画を策定
  • 自転車を安全かつ快適に利用できるよう、歩道および車道と物理的に分離した通行空間整備の必要を推進計画に明記し、整備に時間を要する場合には、社会実験としてポストコーンなどによる仮設の分離を促進
  • 自転車通行空間整備を進めるにあたって、ネットワーク計画と活用推進計画を早急に構築する必要があり、策定に要する費用と人材の提供を道路局として実施。また、実施にあたっては最低5km程度を切れ目無く整備するよう明確な指針を示す
  • 現在、自転車道・自転車専用道では相互通行が認められているが、道路の両側に設備されている場合には、道路全体から見て左側通行の自転車スペースをより太く、同右側通行の自転車スペースをより狭く(少なくとも2対1以上)とし、対面式レーンを整備する際の原則とし、これによって交通管理者において徹底がむつかしい逆走防止を道路設計手法で改善
  • 道路構造の定義を見直し、自転車道、自転車専用道に加え、自転車歩行者専用道、自転車歩行者道の自転車通行指定部分を彩色、法定外表示等で明確化し、当該部分を歩道から除外(非歩道化)し、歩行者と自転車の区分を明確にする(要協議対交通管理者)
(6) 車道の見直し
  • 通勤・通学の多い時間帯を統計的手法で予測し、多い時間帯にリバーシブルレーン(利用時間帯や交通状況に応じた可変式道路構造)を導入(※参照文献1)
  • 車道脇を走行する自転車の安全を高めるため、道路左端の排水枡カバー(グレーチング)の代替として、一部で既に導入されているライン導水ブロックの採用を推進
  • 歩道だけでなく、車道の路上駐車帯の一部もシェアサイクルステーションとして利用可能とし、歩道空間を確保するとともに存在をわかりやすく、利用しやすくして三密を回避しやすい環境をつくる
(7) 自転車通勤・通学の促進策
  • 自転車ネットワーク計画を設定した自治体は少なくないが、整備の進行は遅い。このため、まず通勤・通学で利用される道路を優先して整備する方針を明確にし、交付金を重点的に配分
  • 道路の未利用空間を活用し、シャワーを備えた着替え施設、自転車用ポンプ、ロッカールーム等を自転車利用促進施設として整備
(8) 自転車駐車場の整備
  • 自転車駐車場(駐輪場)は道路法および道路構造令で規定はされているものの、自治体や民間によるものが多く道路管理者による整備は進んでいない。この際、道路管理者が通勤・通学に利便性があると考えられる地域の道路上に駐輪場を設置。今後、自動車の利用は減少すると考えられるため、需要の少なくなった道路の車線部分や、従来自動車用に整備された駐車場や、路上パーキング(時間制限駐車区間)の一部も駐輪場に転用
(9) 観光関連
  • GPSとの連動で進む先の道路の周辺情報が得られるウェラブルデバイスの開発
  • 熱中症対策として、木陰を増やし、休憩所(自転車版道の駅)を設置
(10) 啓発・教育
  • 関連行政機関と協力して自転車インフラの使い方と自転車の安全利用法を利用者に教える自転車教室を実施
  • 「自転車学会」を提唱し、With CORONA社会における都市交通課題に取り組む姿勢を明確化
〈参考画像〉
〈参照文献〉